TOTO &
THE GROUND depot.
THE GROUND depot.
今回の「A SCENE TALK」はチェコのプラハにてヴィンテージからレギュラーまで幅広く独自の視点でセレクトしたアイテムを発信している「TOTO」の山下さん、なつみさんのお2人と、大阪堀江の人気セレクトショップ「THE GROUND depot.」のバイヤー角尾さんにお話をして頂きました。
古家 いきなりですが2人を見てると、なんか「ダブルファンタジー」が頭に浮かんでしまう。篠山紀信氏が撮った“ジョンレノンとオノヨーコのアルバム用の写真。
山下 古家くんそれよく言うてくる。笑
古家 特に今やってることが強いんだろうけど、2人だけの世界観がすごくかっこよく感じる瞬間があって、オルタナティブな生き方をしている。そういうところに日本在住の僕自身が魅せられていて、今回一緒にモノづくりができて光栄です。
古家 何故2人でそもそもやろうと思ったのか馴れ初めなどあればお聞かせ下さい。
山下 当時大阪のそれぞれ違う古着屋で働いていたのですが、界隈のつながりがきっかけで出会いました。僕もそうだったんですけど、ナツミちゃんも当時から結構海外志向というか。なんか幼い頃からよく外国行ってたから話があいました。
なつみ 私の母親が元々アンティークレースのバイヤーをしていて、それの買い付けによく借り出されていたのがきっかけで将来はそいう仕事をしていきたいなと。
古家 生まれた時からそいう環境にあったんですね。
なつみ そうですね。母の影響でずっと家に古い物ばっかりあるみたいな。最初は20年前ぐらい、アメリカン雑貨みたいなのが流行ってた時期でそっから始まったんですけど。だんだんヨーロッパの方に行ったりとかして、色々変わっていったんです。なのでアメリカ行ったりイギリス行ったりフランス行ったり。
山下 僕も若い時からずっと買い付け行かしてもらってたので、単純に馬があったというか。考え方とか自然とひっついていったみたいな感じですね。それで交際した時に1回2人でヨーロッパを車でぐるぐる回った事があったのですが、それもヨーロッパで落ち合って、ヨーロッパで解散っていう。その時に、もうこれで食べていきたいなみたいな感じになって。でもやっぱタイミングもないし、金銭的な問題もあって、それを2人の将来の夢として掲げていました。
そこからお互い27歳の時、ちょうど4年前ぐらいにもう行こうってなって向こうに行った感じです。本当に最初は何も考えてなかったです。とにかくもう行ってみることが大事。住んで見つけていこうみたいな。
山下 そんな感じなので、今みたいに めっちゃ真剣にオンラインストアをやるみたいなビジョンとかもなく、バイイングのスキルはあるので、それを活かして最初はご飯食べていこうという考えでした。僕もよくわかってないですね。なんでこうなったのかっていうと。笑
なつみ 何も考えてなかった。プランみたいなのは本当になかったです。
山下 ノープランでいきました。今は得意なことを仕事にしできたなっていう実感があって運がよかったなと感じています。
山下 実はなつみちゃん、住むまでチェコに1回も行ったことがなくて。日本で同棲してた時に ヨーロッパで仕事しようってなって。最初僕はベルリン行きたかったんですよね。なんか2人でドイツ行ったのが結構いい思い出あって。 なんか楽しそうだなって。
あとドイツは単純にかっこいい人が多いっていうのもあって。かっこいい人が多いってことは、かっこいいものが溢れてるって思ったんですけど、 まさかのコロナでビザ取れなくなっちゃって。でもなつみちゃんも日本の仕事切り上げてヨーロッパ行く予定してたし、僕もピーカン(前職場)に辞めるって言ってたんで、そんな中でビザ取れへんってなって。やばい、無職になるなって焦って。笑
ヨーロッパのいろんな大使館まわって全部同じ文章で送ったんですよね。 ビザ下ろしていただけますかって。でもコロナの環境下でどこも返事はなくて。。。
でも1か月後のある日チェコだけ返事がきたのです。ほんと突然に。
なつみ チェコだけいいっすよみたいな感じで。
古家 コロナ真っ只中やもんね。チェコゆるめ。笑
山下 そう、ゴリゴリ。 僕はプラハに行ったことあって。23歳ぐらいの時に初めて行きました。右も左もわからへんかって、つまらん国やなっていう印象のまま終わってて。でもね、ビザを今降ろしてくれる国なんてチェコしかないから、うん、じゃあ行くかと急いで準備するみたいな。笑
それが流れですかね。
だからもしそこでフランスから返信がきたら僕はフランスに行ってましたし、その時の僕たちのテンションはヨーロッパならどこでもいいなと思っていて。
なつみ 私も話は聞いてて、物価が他の国と比べてそんな高くないっていうのと、 位置も結構良かったんですよ。ドイツの真横だったりとか。元々ドイツ行きたかったし、ベルリンープラハも車で3時間と近くて。本当にそれもたまたまですが。
山下 よくあのタイミングで動いたなと思います。すぐ東京のチェコの大使館行って、申請してビザもらって行ったみたいな感じです。最初着いた時は、古着探すっていうよりか、まず家探そうって。住む家すら考えてなかったので。笑
古家 今チェコを拠点にされていますが、普段お2人が「TOTO」を運営していく上でのマインドやざっくりとしたビジネスルーティーンをお聞きしたいです。
山下 まず僕らがモットーにしてるのは、 お客さんに合わせに行かない。
今、この需要が高いからこれを売るっていうのはしたくなくて、自分たちに合わせてもらうスタイル。だから別に休みたかったら休むし、オンラインやりたいなって思ったらめっちゃやる。そのリズムを大事にしてますね。スケジュールはあんまり立てないっていうのがスケジュール。 やっぱ生き物じゃないですかね、洋服って。それはそこに従うようにします。でもそろそろ新しい服欲しいなって思ったら、いつもフランス行ったりイタリア行ったりするようにしてて。帰ってきてその場で見つけた好きなものを出すっていうスタイルです。 なんか夏場に全然レザーのライダース入荷しますし、真冬に半袖のTシャツも入荷しますし。
なつみ バイイングは行ったら確実にこれが買えるってわけではないから。大変なとこでもあり、面白いとこもあるから、なんか予定立てられないです。
古家 バイイングにも縁がつきものということ。
なつみ そう。なんか決めすぎたら、逆に出せないものとかもあるから。夏にライダース出し始めたりとかした時はいいなって思いました。売れるしね意外と。日本の方も夏に、それこそ今年は日本の方が。
山下 40度近くの時にライダース買ってるとかって思うんですけど、でもなんかそれがファッション。
ルーティーンであり、心がけていることは、柔軟にいようってこと。
山下 めっちゃ恥ずかしいんですけど。僕がなつみちゃんと当時付き合ってる時に、ノリでととみって呼んでて。その日いきなり降りてきたんですよ。
なつみ そういうのあるじゃないですか。
山下 全然違う名前で恋人を呼ぶ変なニックネームみたいな。笑 ととみっていう、なんか音の感じが好きやって。で、2人である日店の名前何する。っていう話してたんですけど。もう決まらないしめんどくさくなって、ととみって呼んでるし「TOTO」で行こうかと。
古家 笑
山下 考えすぎて作るものって時折ダサいなって思うことが多いので、もうTOTOにしよう ってなりましたね。やっぱそこで話には上がりましたよ、トイレのあのブランドさんと一緒やんみたいな話。でもこれでっていう。
古家 たしかに日本人は意識してしまう名前。笑
なつみ ほんまに彼そういう感じなんですよ全て。話しててもそんなにプランとかないですねみたいな感じなことが多いんです。
古家 臨機応変の極み。笑
なつみ 後から変えたらいいやんみたいな。オンラインストアも最初始める時もめちゃくちゃシンプルで。究極のシンプルに作ってって言われて、それもだんだん良くしたらいいやんTOTOの名前すらも。別に一生それじゃなくてもいいと。それが私は当時衝撃でしたね。結構かっちり決めていくことが普通と思っていたので。
山下 僕は本当に全然思ってないです。名前も全然変えたらいいやんと思ってますし、お店もガンガン移転したらええやんと。考えすぎない事を大事にしています。
古家 考えすぎないことが重要。確かにブランドを運営していく時も、コンセプトを最初から決めすぎると後から 無理が生じてくる。そのコンセプトに縛られちゃって、やりたいことができなくなってしまう。もちろんブランドによってはの話だけど自分も世の中も常に変化していくからそれぐらいの気持ちで柔軟性を大切にするって本当に大事かもね。
山下 なんか苦しくなりますね、考えすぎていると。無駄に歩いてみたり、電車乗ってる時とかに「あ。」 ってなったりするその感じを大事にしたいなって思います。
角尾 ピーカンでお客さんとして。僕が高校生の時です。
山下 ほんまにずば抜けてましたね、センスが。まじでかっこいい服ばっかり買うやんって。
角尾 洋服はめっちゃ買ってました。
古家 高校の時から坊主ですか?
角尾 はい、高校2年生ぐらいから。笑
当時はいっぱい買って、いっぱい着てって感じだったんですけど、急になんか引き算を覚え出して。
山下 引き算覚えるん早い。
古家 引き算。
角尾 そうしていくうちに僕も大学に。
古家 ピーカンもよく行ってたとは思うのですが、やっぱその頃からこの業界を目指した?
角尾 そうですね。最初はデザイナー志望で学校入ったんですけど、なんか気づいたら 売りたいなって。その大学行ったきっかけとかもデザイナーとしてランウェイしたいとか、そういう感じだったんですけどね。古着屋さんいっぱい回ったりとかしてるうちに、なんか気づいたらそうなりました。ビーカンであったり、他にも仲のいい店舗さんがあるんで色々回ってたりしてたら、この業界の人と人に重きを置く感じ、お洋服というよりは人と人の繋がりが凄くいいなと感じるようになりました。
角尾 この店はそれこそさっきの山下さんのきっかけみたに、ふって湧いてくるじゃないですけど、漠然と大学に入ったらアパレルの仕事、 「THE GROUND depot.」でバイトしたいなって思ったんです。もうここでしょって感じでで履歴書書いて、 募集とかも何もしてなかったんですけど働かせてくださいって言いに行きました。
古家 千と千尋方式。
角尾 面接してもらって、大学から4年間ずっとアルバイトしまして、そのまま社員にっていう。
古家 そういう流れなんですね!高校から買いに来てたんですか?
角尾 そうですね!ただやっぱり高校生のお財布なんで、なかなかしんどかったですけど、絶対にこっちに来たら覗くようにはしてて。いろんなものがあって、面白いなって。当時雑誌とかもあってオムニバスな店の感じ が好きだったんです。それが頭にあって大学入って気づいたら、履歴書持って来てましたね。
古家 なるほど。昔僕も別のバッグブランドやっていた時にTHE GROUND depot.さんに取り扱って頂いてましたが、その時は会ってないですよね。
角尾 そうですね。バイトで月の出勤日数も少なかったんで。ただ、「nunc」は売れてましたし、めっちゃ背の高いデザイナーさんの存在は知ってました。どのデザイナーよりもでかいです。笑
古家 それから月日が流れて、今ではA SCENEを取り扱って頂いてます。
角尾 はい、もう1年半ぐらいになりますね!
古家 今回、このプロジェクトに協力頂けた理由は何でしょうか。
角尾 まずは繋がり。実際その結果がこのアイテムになったわけなんです。古家さんがつくっていたカバンであったり、山下さんがセレクトした古着アイテムを実際使ってたんで。混ざるとどうなるんだろうっていうのがありました。古いモノを使って新しいモノを作るっていうのはそもそもお店になかったというのもあります。 絶対やってみたいなと思いました。
なつみ そういうのあんまりないんですか。
角尾 あんまりうちでは取り扱いがないですし、それを別注でやるっていうのもあまり周りでも見ないかなと思います。特にこんなにスペシャルな生地で。トリプルネームみたいな感じになるじゃないですか。そういうのも意外とないのかな。 アーティストさんに書き下ろしてもらったとか、そういうのはあるとは思うんですが、古いものをリサイクルしてみたいな文脈のものは あんまりないのかなと思います。
山下 以前から古家くんともよくお話していただいてたんで。何かしようって、結構1年ぐらい話してましたよね。
古家 そう。ずっと話だけはしてて。
山下 でも、いろんなタイミングもあってあんま前進しなくて。
古家 そう、でも突然ゴリ(山下)が独自のルートができてめっちゃいい生地があるって言ってくれたあたりから進むようになったね。
今度、本当にそれを買ってくるから見てくれみたいな感じで本当に送ってきてくれた生地がすごい良くて! それをユウジさん(dept.社長)に見て頂いたら、めっちゃいいじゃないってなって。やっぱりこう何かプロジェクトをやるっていう時に絶対ある高揚感の広がりってすごい重要だなと思っていて今回もそれを感じる瞬間がありました。売れる売れないも大事だけど、 共鳴してちゃんとそれぞれの力をコラボレートさせる事、そして人の記憶に残る事がコラボレーションする上ですごい大切なことだなと思ってます。だから、いろんな人にやっぱり知ってもらいたいし、もちろん持ってもらいたいですよね。数少ないけど。笑
山下 正直な話、今回のミリタリーの古い生地って本国でも愛されてるから今すごく高くて。でも、それをあえて使って作ってるみたいな。あんまりしない っていうのもあって、今回すごいいいプロジェクトやなと思ってます。
なつみ ずっと話してたもんね。何かできないかと。笑
古家 今プロジェクトでは、ASCENEの新作でもある巾着型ショルダーバッグのデザインを採用しました。「TOTO」が用意してくれた生地についても是非お聞かせ下さい。
山下 古いチェコスロバキア軍の生地とオーストラリア軍の生地ですね。
共通していることが、全てほんとに良い生地でコットン素材が高密度に織り込まれて作られているのでとにかくタフです。用途がテント用という事もあって強度、撥水性に優れています。このような素材は、使い込んでいくと"あたり"が出てフェードしたり使えば使い込むほど雰囲気が良くなっていくのが良いところだと思います!
またミリタリー生地は国からのオーダーなので節約されておらず、予算がある程度大きくある中の製造されていて必然的にミリタリー生地は良いです。
あとやっぱり最初古着の入りってアメリカ物が多いじゃないですか。アメリカ軍の迷彩とか。あれってすごいかっこいいんですけど、 だんだん日本では新鮮味がなくなってきてしまってますよね。でも、もっと世界に目を向けると歴史的背景からたくさん軍隊もあったりしてて、国ごとにデザインの違う迷彩って無数にあるんですよ。でも、その細かい情報はあんまりないというか。だから、僕らも結構感覚で選ぶんですよね。「この柄めっちゃ可愛い」って。そこを1番大事にしてます。
今回は、主にチェコのチェコスロバキア時代迷彩柄を用意したんですけど、まず単純に可愛い。そして50年代60年代ぐらいのものなんですけど、当時チェコが社会主義であったり、政党や国とかが保有してた古い迷彩のパターンでちょっとくすぐるところがありませんか?
50-60年代 チェコスロバキア【アーミーテント】
【CS-TYPE A】 これはもうシンプルに色が良いです。薄い色でぼやっとした抽象的なパターンがミリタリー感がなくてかっこいいです。
【CS-TYPE B】 同じ年代のチェコスロバキア。若干スクエアのようなパターンが特徴的で、良い意味で社会主義感があるというか、建物にも共通して言えるこの時代が存分に出たカモフラージュパターンが良いです
60年代オーストラリア【アーミーテント】
【AU-TYPE A】 これも可愛い!可愛いばっかりですが。笑
単体で見るより、何か服と合わせるスタイリングで見せるとより可愛い柄かな!
今回4種類の中ではずば抜けてメジャーな迷彩で、ヴィンテージ好きな人はほとんどが見たことがあるパターンだと思います。
結構目立つパターンなので、今回のコラボみたく面積の小さいものでこのパターンってのがアクセントになって上述してるように、スタイリングで見せるとより可愛いと思います。
【AU-TYPE B】 このパターンは正直初めてみました。僕の鮮度的にはこれがずば抜けてますね
なにこれ?何軍?ってなりましたが、この生地の裏面が上のメジャーなオーストラリア軍パターンだったので、
すぐに分かりました。初見とかレアとか一旦抜きにしても、センス抜群のカモフラージュパターン。
これを機に一気にメジャーになりそうなんで、独り占めしときたい気もしますが 笑
古家 どの生地もなかなか簡単に集められないですし、デザインもあえてリメイク感をそぎ落とし、あくまで生地として美しいと思う部分を贅沢に使って今アイテムを生み出しました。もちろん柄は1点モノなのでこんなアイテムはそう簡単に出会えないなって我ながら思います。
山下 「TOTO」のお店をプラハにオープンし、よりリアルに人との交流の中で「TOTO」の世界観を体感してもらえればと考えています。また、今年は知り合いを通じてヨーロッパのセレクトショップ等に出向いてPOP UPで巡回していきたいなとも考えています。今後の動きに是非期待してください。